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Biography

工学部出身の元システムエンジニア。

この経歴は、私の作品と対極にあるように見えるかもしれません。

しかし、高度にデジタル化され、効率と成果のみが求められるシステム開発の現場にいたからこそ、現代人が抱える「魂の欠乏」に気づくことになりました。

かつて私は、無機質な文字列と向き合い続ける中で、心の均衡を崩しました。

それは私個人の問題ではなく、日々の忙殺によって感性が麻痺し、精神的に追い詰められたり、時に自ら命を絶つことさえ選んでしまう人々さえいる、現代社会の縮図でもありました。

そんな極限状態で私を救ったのは、「海」と「木材」でした。

嵐に打たれ、漂流し、傷だらけになって打ち上げられた流木の姿。

それは、社会という荒波に揉まれ、疲弊しきった私たち人間の姿そのものに見えたのです。

一度は「不要」とされた朽ちた木材に、レジンという「海」を融合させ、再び光を与える。このプロセスは、私自身の魂の再生であると同時に、現代社会で傷ついたすべての人々への「存在の肯定」でもあります。

 

私は今、エンジニアとして培った緻密な設計思考を、システムではなく「人の心の再生」のために注いでいます。

Statement

The Device for Regeneration ─ 魂の再生装置

 

現代社会は、私たちに常に「正しさ」と「速さ」を求めます。

その重圧の中で、多くの人が魂をすり減らし、静かに溺れています。

私の作品は、そのような現代社会に対するアンチテーゼであり、疲弊した魂を水面へと引き上げるための「再生装置」です。

「木材」は、時の流れと過酷な環境を生き抜いた「生命の記憶」です。

私は、建築材としては弾かれる歪な形や、風雨に晒され朽ちた部分にこそ、傷つきながらも生き続ける人間の美しさを重ねています。

それらは決して廃棄されるべきものではなく、深い敬意を持って守られるべき存在です。

そこに融合させる「レジン」は、母なる海の包容力と、未来への希望を象徴する光です。

傷ついた木材(個)を、透明なレジン(世界・海)が優しく包み込み、一体化することで、一度は死を意識した存在が美しく蘇ります。

この作品の前に立った時、鑑賞者は社会の喧騒から切り離され、自身の内なる静寂と対峙します。

それは単なる鑑賞体験ではなく、深い呼吸を取り戻すための儀式です。

「一度朽ちても、私たちは何度でも美しく生まれ変われる」。

 

私の作品が放つそのメッセージが、現代を生きる誰かの命を繋ぐ、揺るぎない希望の光となることを願っています。

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